知人が3年ほど前に都内でカフェを開店しまた。「さて、どんなものか…」とネットで検索しても一向にヒットしません。「ほんとにやっているんだろうか?」と疑問をいだきつつ、先日そのカフェに訪れる機会を得ました。住所を頼りに現地に行くと看板もありません。「おいおい、大丈夫なのかよ」と思いつつ、店に入るとカウンター席が7、8席。小さなテーブル席もひとつ、あることはある?といった感じです。

 午後4時からという中途半端な時間から開店したカフェ。開店直後に行ったのですが、すでに先客がいてその後はほどよいタイミングで常連のお客さんが次々と来店し、入れ替わっていきます。初対面の私にもみんな気さくに話かけてくれすっかり楽しい気分で過ごすことができました。

 店主はそれまで飲食とはまったく関係のない業界。いつもポジティブシンキングなとても魅力的な女性(だからと言って下心はありません・笑)。カフェを始めた当初、お客さんは彼女の知り合いからだったようですが、その後も全てが紹介客のようで、まさに類は友を呼ぶという言葉通りに、優良顧客が増えていったと想像できます。女性客も男性客もみんな彼女のファンなのです。店主とはもちろん、お客さん同士でも気が合うので居心地も良いことでしょう。

 店に居ながら、京都で江戸時代から300年以上続く歴史あるお茶屋さんの話を思い出しました。「一見さんお断り」でフィルターをかけ、ひとりひとりのお客さんへのおもてなしにエネルギーを注ぎ、顧客の満足度を上げていく。全てが紹介なので信用のおける優良顧客のみ。LTV(ライフ タイム バリュー.・顧客生涯価値)を上げて安定した経営を続けていけるという理想的なビジネスモデルです。

 当初は「マーケティングのアドバイスでも…」なんて思っていましたが、まったく逆。なぜ、インターネット上にお店の情報を公開しないのか、なぜ看板もないのか、その理由がわかり、大変良い勉強をさせていただきました。

看板もないカフェに関連して 本の話

ファンベース
佐藤 尚之 著
ちくま新書
880円+税

 最近読んだ本の中で、お勧めの一冊「ファンベース」。ファンベースとはファンを大切にし、ファンをベースにして中長期的に売上を上げていく考え方。顧客全体の中で20%のファンとさらにその20%の中の20%(4%)のコアファンが中心となって売上の80%をつくるというパレートの法則にあてはめ、ファンの重要性を説きファンのつくり方を指南した注目の書です。「一見さんお断り」の300年続く京都のお茶屋さんのビジネスモデルは無理でも、現状の顧客の中からファンベースを構築していくことは充分に可能だと思います。ぜひ読んでみてください。